引け際の美学「受け月」
直木賞受賞作・伊集院 静著「受け月」読破。
「野球を通して語られる人生の機微、人々との触れ合いは愛しく哀しい」
帯広告にあるキャッチコピーは、間違いなかった!
小さな田舎町にはリトルリーグなんかまだ無かった時代、
小・中学生の子供達は自然と集まり、日見公園でよく草野球をやっていた。
そこには遊びながら上級生の真似をし、技を覚え、苦楽を共にする仲間がいた。
そんな事までを想い出させてくれた、野球にまつわる短編集。
失われた時代や若かった頃の自分、過去への思い・切なさ。
決して多くを語らない寡黙な大人達の美学・・・
作家伊集院 静氏の立ち姿・人生観が垣間見える。
「受け月に願い事をすると、願い事がこぼれないで叶う」
「店の名は“はる半”、春の半分くらいのあったか味で店をやって行け」
「味だけじゃ客は来ない。味が悪けりゃもっと来ない。
丁寧に客をひとりづつ拾っていくことだな」
「自分だけのために野球をするなよ」
「俺は野球というゲームを考え出したのは人間じゃなくて、
人間の中にいる神様のような気がするんだ」・・・
こんな胸に沁みる小説や映画には、いつまでも浸っていたい。
関連記事