直木賞選考委員選評にみる「ホテルローヤル」
アッ!と言う間に、オール読物の直木賞特集記事を読んだ。
まず、受賞作「ホテルローヤル」への直木賞選考委員の選評が凄い。
「この文章力。連作短編集のあらまほしい形を踏んでいる。」阿刀田高
「女の懐の刃先が見え、ゾクッとしてしまう。」伊集院静
「それぞれの登場人物のいじましさ、せつなさ、滑稽さというものは
何ともいえない。」林真理子
「誰もが反撥せずに身近に感ずる不幸の諸相を、
上手に表現していた。」浅田次郎
「桜木紫乃さんは、〈生活苦〉を書いたら天下一品の作家。」宮部みゆき
「桜木氏はすぐれた料理人のようなもので、
どこにでもある材料で旨い料理をつくりあげてしまう。」宮城谷昌光
「状況設定が巧みなうえに、そこで繰り広げられる男女の姿が
それなりに存在感があり読ませる。」渡辺淳一
「男女が体を繋げる場所・互いの間の溝を認識する場所〈ラブホテル〉。
その惑いや岩が軽やかに書き分けられいる。うま過ぎる。」桐野夏生
「人間の愚かな悲しみ、安直な行為、あやふやな関連性の底には、
深い沼のような情念の闇がある。
それが逆に、小説の光となっているように思える。」北方謙三
選考委員ほぼ絶賛!の選評なのだ。
これじゃ、弥が上にも期待してしまうのが読者。
「シャッターチャンス」「本日開店」「星を見ていた」の3作品、
同時掲載の自伝エッセイや官能小説家?先輩・小池真理子氏との対談共々、
アッ!と言う間に読み終えてしまった。
〈ラブホテル〉を舞台に繰り広げられる、人の営みの可笑しみ・哀しさ。
選考委員の選評の視線・言葉の重み・表現力が多様巧みで、
受賞作品以上に面白く楽しめた次第。
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