2016年03月06日
人の恩に報いる為に♪
「いい話だなぁ」と嬉しくなった文藝春秋の記事、
平岩弓枝・柳田邦男・梯久美子の座談会「人生の終りに何を遺すべきか」から。
小説家・劇作家:長谷川伸は「瞼の母」「一本刀武者修行」「国定忠次」等、
義理人情の世界を描き大衆文芸や演劇界で活躍した作家。
門下生に、村上元三・山岡荘八・戸川幸夫・池波正太郎・西村京太郎他がいる。
その内の一人が脚本家・小説家の平岩弓枝で、
TV等の「御宿かわせみ」「ありがとう」「肝っ玉かあさん」シリーズで名をはせた。
恩師の長谷川伸先生が体調を崩し入院した時、平岩弓枝さんが付き添った。
先生は天婦羅が好きだったが、お粥さえ召し上がれない状態。
しかし医者が「とにかく口に入れるのがいい」と言うので、
〈好きな物を食べさせよう〉と先生が以前通っていた天婦羅屋にすっ飛んで行く。
「おっ、先生は天婦羅が食える程元気になったのかい。嬉しいな。
アツアツでないと」と、店のおじさんは消化の良いものを選んで揚げてくれる。
その天婦羅を持ってタクシーに飛び乗り、病院の行く先を告げる。
運転手は匂いから「お客さん、天婦羅持ってるね。お見舞いですか?」
「主治医の先生からお許しが出たので、天婦羅を取りに来たのです」
「そりゃ良かっですねぇ。冷めると不味いから、病院までの道は私に任せて下さい」
時は東京オリンピックの前年で、道路の渋滞が酷い時代。
運転手は狭い路地から路地へ、猛スピードで飛ばす。
アッという間に病院に着いてタクシーを降りようとすると、運転手が言う
「お客さん、天婦羅はあったかいかい?先生、お大事にね」
▲天婦羅はあったかいに限る
先生の病室に飛び込んで直ぐに窓を開けて見ると、
さっきの運転手が玄関の前から窓を見上げるようにしている。
「ここです、ここです。有難うございました」と上の窓から手を振って言う。
先生は「平岩君、どうしたんだ」とおっしゃるので、
「親切な運転手さんのお蔭で、天婦羅があたたかいままで届きました」
すると寝たきりだった先生は「どうしても起きる」と言うので奥様と二人で抱え起こし、
食べると「おいしいね、ありがたいねぇ」と言い海老の天婦羅を3本戴かれる。
「人の心、人の恩が分からぬ人間に小説は書けない。
僕は本当に苦労してきたが、助けてくれる人がいたから物書きになった。
僕の文学はそうした多くの人に恩返しのつもりで書き続けたものだ。
僕があの世に行ってしまったら、天婦羅の恩は君が返してくれるだろうね」
結局その時の天婦羅が、先生が口にされた最後の食べ物になってしまう・・・
いろんな人の思いやりの心が、先生にあったかい天婦羅を届けさせてくれた。
人生、捨てたもんじゃないなぁと改めて思う。
平岩弓枝・柳田邦男・梯久美子の座談会「人生の終りに何を遺すべきか」から。
小説家・劇作家:長谷川伸は「瞼の母」「一本刀武者修行」「国定忠次」等、
義理人情の世界を描き大衆文芸や演劇界で活躍した作家。
門下生に、村上元三・山岡荘八・戸川幸夫・池波正太郎・西村京太郎他がいる。
その内の一人が脚本家・小説家の平岩弓枝で、
TV等の「御宿かわせみ」「ありがとう」「肝っ玉かあさん」シリーズで名をはせた。
恩師の長谷川伸先生が体調を崩し入院した時、平岩弓枝さんが付き添った。
先生は天婦羅が好きだったが、お粥さえ召し上がれない状態。
しかし医者が「とにかく口に入れるのがいい」と言うので、
〈好きな物を食べさせよう〉と先生が以前通っていた天婦羅屋にすっ飛んで行く。
「おっ、先生は天婦羅が食える程元気になったのかい。嬉しいな。
アツアツでないと」と、店のおじさんは消化の良いものを選んで揚げてくれる。
その天婦羅を持ってタクシーに飛び乗り、病院の行く先を告げる。
運転手は匂いから「お客さん、天婦羅持ってるね。お見舞いですか?」
「主治医の先生からお許しが出たので、天婦羅を取りに来たのです」
「そりゃ良かっですねぇ。冷めると不味いから、病院までの道は私に任せて下さい」
時は東京オリンピックの前年で、道路の渋滞が酷い時代。
運転手は狭い路地から路地へ、猛スピードで飛ばす。
アッという間に病院に着いてタクシーを降りようとすると、運転手が言う
「お客さん、天婦羅はあったかいかい?先生、お大事にね」
▲天婦羅はあったかいに限る
先生の病室に飛び込んで直ぐに窓を開けて見ると、
さっきの運転手が玄関の前から窓を見上げるようにしている。
「ここです、ここです。有難うございました」と上の窓から手を振って言う。
先生は「平岩君、どうしたんだ」とおっしゃるので、
「親切な運転手さんのお蔭で、天婦羅があたたかいままで届きました」
すると寝たきりだった先生は「どうしても起きる」と言うので奥様と二人で抱え起こし、
食べると「おいしいね、ありがたいねぇ」と言い海老の天婦羅を3本戴かれる。
「人の心、人の恩が分からぬ人間に小説は書けない。
僕は本当に苦労してきたが、助けてくれる人がいたから物書きになった。
僕の文学はそうした多くの人に恩返しのつもりで書き続けたものだ。
僕があの世に行ってしまったら、天婦羅の恩は君が返してくれるだろうね」
結局その時の天婦羅が、先生が口にされた最後の食べ物になってしまう・・・
いろんな人の思いやりの心が、先生にあったかい天婦羅を届けさせてくれた。
人生、捨てたもんじゃないなぁと改めて思う。
Posted by 夜更かし中年隊 at 03:00
│人生いろいろ