2015年12月20日
「恋多き歌人」の残り火
彼女は養護老人ホームで亡くなった。83歳。
「たたかいに やぶれて咲けよ ひまわりの 種をやどして をんなを歩く」
恋愛を「たたかい」と詠み、、内奥に花の種を宿した歌人。
彼女は半世紀という長きにわたり、地域の短歌会を牽引してきた。
そんな歌人を、3年目になる生意気な女性記者が取材を始める。

▲よく見ればひまわり
「あなた、目に見えるものと内容が違うことくらい、新聞記者ならわかるでしょう」
「結婚もしなかったし、子供もいない。
そのお蔭で手に入れたものもたくさんあるのよ」
「人間ひとりを、そんなカテゴリーでくくろうってところに無理があるの。
記事にするなら、わたしが死んでからにしなさい」
「あなた、おもしろそうな子だから、わたしの追悼記事をお書きなさいな。
もちろん、すごくおもしろく書かなきゃだめよ」
「後ろめたいことのない人間なんて、胡散臭くて気持ちが悪い」
「文化人ってのは、記者を前にして自分がどう見えるかばっかり気にしている。
あそこまでいくと滑稽を通り越して気の毒だな」・・・
彼女は自分の夢を叶えてくれるかも知れぬ青年とふたり、泥まみれの晩年を選ぶ。
何度目かの二人旅から帰り、体調を崩した歌人は、
青年へ全ての譲渡手続きを済ませ老人ホームへ入所する。
「これから先は、自分が死んでも二度と会わないこと」といいつけをして。
彼女の死から約一年後。
青年は5年間の豊饒な歌人との景色を「デュラスとの日々」という小説にし、
注目を浴びることになる・・・

これは桜木紫乃の小説「起終点駅ターミナル」の中の
「たたかいやぶれて咲けよ」の一編。

映画化するなら、80代の「恋多き歌人」を演じられるのは誰だろう?
ちょっと気の強そうな新聞記者は?そして青年は?
そんなことを夢想させる、心に余韻を残した小説だった。
「たたかいに やぶれて咲けよ ひまわりの 種をやどして をんなを歩く」
恋愛を「たたかい」と詠み、、内奥に花の種を宿した歌人。
彼女は半世紀という長きにわたり、地域の短歌会を牽引してきた。
そんな歌人を、3年目になる生意気な女性記者が取材を始める。

▲よく見ればひまわり
「あなた、目に見えるものと内容が違うことくらい、新聞記者ならわかるでしょう」
「結婚もしなかったし、子供もいない。
そのお蔭で手に入れたものもたくさんあるのよ」
「人間ひとりを、そんなカテゴリーでくくろうってところに無理があるの。
記事にするなら、わたしが死んでからにしなさい」
「あなた、おもしろそうな子だから、わたしの追悼記事をお書きなさいな。
もちろん、すごくおもしろく書かなきゃだめよ」
「後ろめたいことのない人間なんて、胡散臭くて気持ちが悪い」
「文化人ってのは、記者を前にして自分がどう見えるかばっかり気にしている。
あそこまでいくと滑稽を通り越して気の毒だな」・・・
彼女は自分の夢を叶えてくれるかも知れぬ青年とふたり、泥まみれの晩年を選ぶ。
何度目かの二人旅から帰り、体調を崩した歌人は、
青年へ全ての譲渡手続きを済ませ老人ホームへ入所する。
「これから先は、自分が死んでも二度と会わないこと」といいつけをして。
彼女の死から約一年後。
青年は5年間の豊饒な歌人との景色を「デュラスとの日々」という小説にし、
注目を浴びることになる・・・

これは桜木紫乃の小説「起終点駅ターミナル」の中の
「たたかいやぶれて咲けよ」の一編。

映画化するなら、80代の「恋多き歌人」を演じられるのは誰だろう?
ちょっと気の強そうな新聞記者は?そして青年は?
そんなことを夢想させる、心に余韻を残した小説だった。
Posted by 夜更かし中年隊 at 16:19
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